琥珀の瞳

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― 天心 2―

 

 天心は、唯一、御自らを滅ぼすことのできる存在、蒼龍からその御身を守るため、新たに支柱を創り給うた。
 天心を愛し、守るための存在。蒼龍に対抗できる能力を与えられし存在。蒼龍の能力を殺ぐことのできる存在。ただし、その能力は万能にあらず。創造主により賜りし密やかな可能性――蒼龍に屈する可能性もその身に隠せり。
 天心は、その支柱を御身とそれに模して創られた蒼龍と違う形に創り給うた。蒼龍が向けるものとは違う愛情を御身に向けてもらうために。抱かれ、抱くための別の形を創り給うた。
 それが白虎。二つめの四神。



「蒼龍は白虎が好きなんですねぇ」
 いつも白虎を視界の中に入れて見守っている蒼龍にふと天心が呟いた。
「やはり自分よりも小さくてか弱いものはかわいいでしょう? たったひとりの仲間ですから余計に」
「……」
 蒼龍は黙ったまま天心の問いにこくりと頷いた。その視線は庭の木に登って遊んでいる小さな四つ足の獣に注がれたままである。
「少しは私があなたを思っている気持ち、わかっていただけましたか?」
 そう言って、天心は蒼龍の腕を取った。袖の中に隠していた傷を癒してやろうと思ったのだ。
「また、白虎が悪さをしたようですね」
「いらねぇよ!」
 蒼龍は乱雑にその手を振り払う。
「……蒼龍。素直じゃない子は嫌いですよ」
「うるさいッ!」
 溜息をついて、もう一度手を取ろうとした天心に、蒼龍は突き刺すように睨み付けて叫んだ。
「お前なんか嫌いだ。あの子がお前のことを最初から好きになるように創ったりして卑怯だ! あの子の本当の気持ちを最初から決めて創るだなんて、そんなのはきたない!」
 蒼龍の身体を蒼い炎のような怒気が包んでいた。天心も、ここまで感情をあらわにした彼を見るのは初めてだった。
「……『私を守るためのものを創れ』と言ったのは、あなたですよ、蒼龍。私を守るため、白虎が私を愛することは必要です。だからそのように創っただけのこと。それが、卑怯ですか? 一体何を怒っているのです?」
 これがあなたの望みでもあるのでしょうに――天心は刺すように睨み付けてくる蒼い瞳に静かに問うた。しかし、それに答えたのは吐き出される言葉でも蒼い炎と化した怒気でもない、音もなく静かに溢れてはこぼれる涙だった。


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