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「私の――を盗らないでッ!!!」
半狂乱。
天心の手の中にあるモノをひったくるようにした私の様子を表すとしたら、こんな感じだったのだろう。
天心は、黙ってそのまま姿を消した。
部屋に残されたのは、私とナオと――泣き声を上げずともよい姿になった、私たちの子供だった。
あの時何を叫んでいたのかわからない。覚えていない。
ただ、何かを叫びたい衝動に駆られていた。
「コハク――!」
耳元に響く破裂音と、低く、鋭い声――恐ろしいほどの怒気を含んだ声で我に返ると、私は肩で息をしながら泣いていた。
「…………ナ……オ……?」
そして、しゃくりあげる私に冷徹な視線が注がれていた。
いつもどんなときでも、優しく暖かく見つめてくれていた、あの瞳ではなかった。どこまでも凍てついた氷の刃だった。
ナオは無言で私の手から赤ちゃんだったモノを奪うと、そのまま背を向けて消えてしまった。
何も、言わずに――。
※※※
ひとり取り残されて、私はただ泣き続けた。
最初は、何がなんだかわからなくて。
そして、自分が何をしたのか思い出して、また、泣いた。
私は、母親失格だ。
最低だ。
ナオは私を許しはしないだろう。
断ち切ったはずの呪縛に捕らわれていた自分の弱さを呪って、私は何日も泣いた。
やがて泣くのをやめた私は、自ら光を捨てた。
眼窩を爪が掻き回す感触。それに伴う激痛さえも冷淡に感じていた。
二つの"琥珀≠……役に立たなかった封印――天心の特別な愛を求めてやまない私の宿命を封じるために、天心自らが『私にだけ』授けてくれた彼の色をした両の眼――それを、捨てた。
私は、子供を失った……いや、放棄した。
私は、生まれたばかりのあの子を自ら捨てたのだ。
そして、愛する者を裏切った。
こんな私に、『大切なもの』を持っている資格はない――それも天心から貰ったものを大切に持ち続けるなど、最も許されないことだ――そう、思った。
だから、私は両眼を抉り取った。 すべてを失うべきなんだ。
私は、姿を変えてしまった私の赤ちゃん――私の娘に嫉妬をした、醜い母親なのだ。
「私の天心を盗らないでッ!!!」
私は、娘とその父親である愛する者の前で、そう叫んだのだ。
天心を他の女――自分の娘に盗られたくなくて、彼の君の手の中からひったくったのだ。
私は、所詮そういう女でしかなかった。
蒼龍を愛するようになったのは、呪縛から抜け出した本当の自分の気持ちなのだと思っていた。
けれど――――――思って、いただけだったのだろう。
呪縛は、永遠に私を縛っている。
私が、彼の君の創りし「白」である限り。
琥珀の瞳に己の運命を封じ込めた姫君。
その先に生まれる感情は、運命に捕われていない彼女自身の気持ち――――純白の、何事にも干渉されない白の気持ち――――なのだろうか?
その純白さえも――――――黄金色の神様が創りたもうた色。永遠に白であることに、かわりは……ない。
永遠の白・終幕
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